カロリング朝年代記
813〜906年
9世紀末,混迷を極める時代に,フランク帝国の衰退と没落をその目で活写した歴史家がいた。「カロリング朝の歴史叙述におけるエドワード・ギボン」とも称されるレーギノ(915年歿)は,プリュム修道院長としてノルマン人襲撃後の修道院再建を主導したが,政治的抗争の中で失脚した。その後トリーアで筆を執り,キリスト紀元から906年に至る初の通史『年代記』を編み上げた。その写本は中世において最も広く伝播し,自由な視座と自律的判断のゆえに個性的で最重要の歴史書と評される。
本訳書は,そのうち第一部のイエス生誕から第二部前半までを省略し,カロリング朝末期,カール大帝の死(813年)以降の政治史を編年体で詳述した,史料的価値の極めて高い第二部後半を明快な日本語で訳出する。
レーギノは既存の文献史料のみならず,同時代の書簡や教会決議の詳細な引用,さらには内情に通じた者しか知り得ない情報を駆使して,諸王国の変遷を始め,異民族による略奪や王家兄弟間の内紛など,戦闘に次ぐ戦闘という危機的状況を自身の翻弄された運命を交えて克明に描き出す。叙述は単なる編纂にとどまらず,キリスト教的価値観から歴史的・神学的意味を真摯に考察し,事件の因果関係に関する独自の解釈を展開した。特にロータル二世の離婚訴訟にその特徴が如実に表れるとともに,教会と王権との激しい応酬も垣間見える。
当時の同時代史料との異同,二次文献による様々な見解も踏まえた緻密な訳注が施され,解説論文と系図を付録する。西洋中世史に新たな光を当てる基礎文献である。
凡例
序文
本文(813〜906年)
解説
一 プリュム修道院長レーギノの生涯
二 『年代記』の各稿本の伝承状況
三 『年代記』の成立過程,構成,主要資史料
四 『年代記』の主題
五 キリスト生誕年による紀年法
六 歴史の史料としての『年代記』
七 dux,ducatus の語法
あとがき
年表
地図
系図
参考文献
索引(人名,地名・民族名,事項)
プリュムのレーギノ 著
三佐川 亮宏 訳注
出版年月日 2026/03/20
ISBN 9784862854568
判型・ページ数 A5・376ページ
出版:知泉書館
カロリング朝年代記
813〜906年