アウグスティヌスの恩恵論

  • アウグスティヌスの恩恵論
パウロはユダヤ的律法と対決し,キリストの恩恵によって福音の根本思想を示すことにより,恩恵について明確な表現を与えた。この思想はその後400年にわたってあまり顧みられず,人々の関心は三位一体論やキリスト論へと集中した。
古代末の混乱した時代状況のなかで人間性の罪に対する意識が深まるにつれ,罪と恩恵についての反省が生じ,恩恵の博士アウグスティヌスがパウロ思想を復興させたことで,恩恵論の意義は広く認められるようになった。
本書はアウグスティヌスの初期から中期にかけて形成される恩恵論を原典に即して明らかにするとともに,晩年に至って巻き起こるペラギウス論争をとおして,自由意志と恩恵の関係を突きつめることにより,彼の恩恵論がさらに彫琢され深化されていく経緯を,膨大な史料を駆使してはじめて解明した画期的な業績である。
さらに中世から近世のヨーロッパにおいて恩恵論が人間形成に及ぼした影響を歴史的に考察,啓蒙主義の出現とともに消滅していく恩恵論を現代の視点から再考し,恩恵による自由の意義を新たな可能性として問いかけている。


金子 晴勇 著
出版:知泉書館

アウグスティヌスの恩恵論

6,160円(本体5,600円、税560円)

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